あっちょんぶりけ

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「ネガティブなこと言わなければ大丈夫だから」

「ネガティブなこと言わなければ大丈夫だから」

 

遠い昔、当時の彼氏に言われた一言。

 

ある日、ばったり会った時、出会い頭にほんの数言、交わした言葉の中に何か彼のカンに触る言葉があったようで、みるみる機嫌が悪くなってしまった。言葉で不機嫌を表現されたわけではないけど、不機嫌なのは態度から明らかで。彼も不機嫌であることは認めた。

即座にちゃんと話ができる状況ではなかったけど、何が原因なのか知りたかった。どの言葉が気に障ったのか、心当たりが全くなかった。でも彼も、不機嫌な態度を表に出してしまった事がバツが悪かったのか、聞いても教えてくれなかった。彼は「もう不機嫌じゃないから」的な言葉でその会話を終わらせようとした。「不機嫌じゃない」わけない事は明らかだったけど、”閉店ガラガラ“と拒絶シャッターが下りるのを感じた私は、それ以上追求しなかった。

 

幼い頃から人の顔色を伺う癖がついてしまっていた私にとって、コレはキツかった。何がダメだったのか分からなければ、また次同じ地雷を踏んでしまうかもしれない。原因が分からなければ、直しようがない。打つ手がないまま一方的に嫌われていく気がして、とても怖かった。何しろあの時の私はばったり会えたことが嬉しくて超ご機嫌だったのだ。そんな「嬉しさ全開」で発したほんの幾つかの言葉で、彼が不機嫌になってしまったのなら、それって絶望的だわ、と思った。

 

後日会った際、彼はまだ不機嫌を引きずっていた。あの時「もう不機嫌じゃないから」と明言した割に、なんの躊躇もなく「あのことがあったからご機嫌ではない」と言った。「あのこと」と言われても、教えてくれなきゃ気をつけようがない。何がいけなかったのか教えてほしい。そう私が質問した時に言われたのが

「まぁ、受け取る側の問題だから。

ネガティブなこと言わなければ大丈夫だから。」

 

ネガティブなことって何?!ともちろん思った。あの時私はネガティブな言葉は一切言っていないはずだったから。でも具体的な答えは貰えず。印象としては「あの時は聞く側の自分に心の余裕がなかったから不機嫌になってしまった。特に発言等に気を使う必要はない。基本的には、ネガティブなことさえ言わなければ、俺が不機嫌になる事はないから大丈夫。」と言いたいように見えた。

 

消化不良のまま、冒頭の言葉だけが心に引っかかった。当時の私にとって「彼氏」イコール「一番嫌われたくない人」だから、何を言うにも少しビクビクするようになった。ちょっと彼が押し黙る瞬間がある度にまた何か失言したかも、と思うようになった。また、あの時の不機嫌の原因はさておき、「この人はネガティブな事は聞きたくないのだな」と思うようになった。

「ネガティブなこと」とは何を指すのだろう?2人の関係に関するネガティブ発言?彼に対する文句?嫉妬を表現する事?…でも私個人の日常生活での愚痴も「ネガティブなこと」と言えばネガティブだし…

考えるうちに「あぁ、彼は私のネガティブな部分は引き受けない、聞きたくないのだな」という思いに至った。いつも笑顔で明るく楽しく?何か愚痴や悩みがあってもそれを口にする事なく??

 

彼がまた不機嫌にならないように顔色を伺ったり、ネガティブなことを言わないために話題を慎重に選んだり。そんなことをしばらく続けるうち、よく分からなくなってきた。嫌われるのは嫌だけど、顔色を伺って言葉を選んで言いたいことも言えなくて、笑顔貼り付けて…そんなのは本当の私じゃないじゃんか。そんな思いに至り、開き直り、自分の心が彼から離れていくのを感じた。

 

「ネガティブなこと」とはなんだったのか、結局分からないまま。長い時間が経った今でも時々この言葉を思い出す。